• 2025年4月8日

甲状腺ホルモンとヨウ素

2つの小さいタラコが蝶ネクタイのように首にくっついている様子を想像してみてください。

外見ではわかりませんが、まさしくそんな形でのどぼとけの下あたりにある内分泌腺が「甲状腺」です。そこから分泌される甲状腺ホルモンは、主要なアミノ酸であるチロシンにヨウ素(ヨード)が3個(T3)または4個(T4)結合しただけの簡単な構造です。

ヨウ素を経口摂取すると、ほとんどが甲状腺に取り込まれます。遠い昔、生物がヨウ素の豊富な海から陸に上がるとき、ヨウ素の貯蔵庫として甲状腺は発達しました。

さて、ここで問題です。

卵からかえったばかりの小さなオタマジャクシに甲状腺ホルモンを投与するとどうなるでしょうか?

答えは、『小さいままカエルに変態する』です。甲状腺ホルモンは臓器を形成する上で重要な働きをしています。加えて、基礎代謝の調節にも大きく関わっています。

非中毒性甲状腺腫(単純性甲状腺腫)という甲状腺疾患があります。思春期や妊娠中の女性によくみられ、生理的な腫大で問題ありません。甲状腺ホルモンの合成を阻害する物質を含むアブラナ科の野菜(キャベツ、カブ、ブロッコリーなど)を多く摂取する国では、ヨウ素欠乏を原因とした甲状腺腫としても知られています。

しかし、日本ではまずヨウ素不足になることはありません。逆に、海藻類(こんぶ、わかめ、のりなど)に多く含まれるヨウ素を過剰摂取することによる甲状腺疾患が知られています。根こんぶが健康食品として流行したときによく見られました。ヨウ素を含むうがい薬を過剰に多用することも原因となります。

甲状腺疾患を指摘されている方は、海藻類やアブラナ科の野菜を過剰に摂取しないようお気をつけくださいね。

新城市商工会会報(2003年6月)に掲載の院長記事より

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