今回は、内分泌学の世界では東の横綱である『甲状腺ホルモン』の登場です。

前頭部に小さいタラコが蝶ネクタイの様にくっついている様を想像してください。それが甲状腺です。そこから分泌される甲状腺ホルモンは、チロジン(アミノ酸)にヨードが3個(T3)又は4個(T4)結合しただけの簡単な構造です。ヨードは髪に良いと言いますよね。ヨードを経口摂取すると、99%は甲状腺に取り込まれ、残りが毛等に入ってゆきます。遠い昔、生物がヨードの豊富な海から陸に上がる時、ヨードの貯蔵庫として甲状腺は発達しました。

さて、ここで、問題です。
卵からかえったばかりの小さいオタマジャクシに甲状腺ホルモンを投与するとどうなるでしょうか?答えは、『小さいままかえるに変態する』です。甲状腺ホルモンは臓器を形成する上で重要な働きをしています。加えて、基礎代謝の調節にも大きくかかわっています。

病気は、甲状腺機能により大別できます。

今回は、機能が正常である、非中毒性甲状腺種(単純性甲状腺腫)についてです。思春期や妊娠中の女性によくみられ、生理的な腫大で問題ありません。外国では、ヨード欠乏を原因とする甲状腺腫が知られていますが、日本ではまずヨード不足そのものが存在しません。逆に、海藻類に多く含まれるヨードを過剰摂取することによる甲状腺腫があります。一時『根コンブ』が健康食品として流行したときによく見られました。又、抗甲状腺作用のある化学物質を含有するキャベツ、カブ、アブラ菜も大量に摂取すると、甲状腺腫を引き起こすといわれています。甲状腺疾患を指摘されている方は、海藻類(コンブ、のり、ワカメ等)と共に、これらの野菜も控えておいたようがよさそうです。

米田内科 院長  米田 正弘
新城市商工会会報に掲載の記事(2003年6月)より